燃えよ剣

司馬遼太郎 著

幕末にその名を馳せた新撰組が副長・土方歳三を主人公とした物語。
新撰組は主に農民階級出身の者達で構成されており、ある意味「徳川家に恩はない」人が多かったでしょう。ところが、幕末の動乱で幕府に対して忠誠を誓い続け、戦い続けたのは徳川家譜代の臣ではなく、彼ら新撰組でした。
討幕か佐幕か。攘夷か開国か。これらの思想が渦巻く世の中で、土方はどう思っていたのかに興味があるのですが、あまりそういう話は出てきません。いや、彼にとってはそういう政治的な思想はどうでもよかったのかもしれません。「新撰組」が自分の人生を賭ける対象であり、新撰組をいかに強い組織に作り上げるか、ということが彼の関心だったのでしょう。幕府滅亡後も新政府軍と戦い続け、そして五稜郭では幹部クラス(幹部クラスは榎本武揚はじめ、降伏した)の中で、彼だけが戦死しています。その死は実に惜しいですが、武士として立派な生き様であったことでしょう。
新撰組は今でも人気が高く、京都でも観光の目玉の一つとなっていますがここに描かれた土方歳三は「鬼の副長」の異名に恥じない人物として描かれておりまする。また、幕末を佐幕側から描いた作品としても、たいへんおもしろいと思いまする。


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